どさんこ田舎者、東京でいろいろつくる

北海道遠軽町出身、さのかずや26歳。大学院を経て、再び東京で会社員。無茶と繊細さと賢さとバランス感覚。

【読書】【映画】百瀬、こっちを向いて。

.

久しぶりの読書。久しぶりの青春映画。

最近全然時間が取れてない中、公開前からずっと観たかった映画が原作ものであることを知ったので、原作を買って読んでみた。
原作を読んだ後はもちろん映画も観た。最近映画いろいろ観てたけど結構古い映画ばかりで、新しい映画は「アナと雪の女王」くらいしか観てなかったので(深夜上映で寝てた)、映画の方も新鮮な気持ちで観た。



文庫本「百瀬、こっちを向いて。」

文庫本「百瀬、こっちを向いて。」は恋愛短篇集。4つの短編が入っていて、ひとつめの短編が表題作。70ページぐらいでさらっと読める。

【ざっくりストーリー】
高校1年生、人間レベル最下層の僕(相原ノボル)は、バスケ部3年で幼なじみの宮崎先輩の二股交際を、先輩の正式な彼女である神林先輩に隠すため、先輩の二股相手である百瀬陽との交際を演じることになってしまう。破天荒な百瀬に付き合わされる日々を経て、僕は百瀬に叶わぬ思いを募らせるようになる。
そんな中僕は百瀬に誘われて、宮崎先輩と神林先輩とのブルデーを行なうことになる。ダブルデートを経て、百瀬と僕は各々やりきれない思いを抱え、帰路に着く。帰り道、僕はばったり出会ったクラスメイト、同じく人間レベル最下層の田辺に全てを打ち明けると、彼の口から出た言葉に突き動かされ、ある人物へ電話を掛ける。


実はこの作者「中田永一」は、僕が中学生くらいのころに厨二病の友達の間で人気だった、陰鬱な小説ばかり書いている作家「乙一」と同一人物なのだそうだ。もともと乙一ラノベ出身であることもあってか、文体は軽めでシニカルな笑いが多い。ひらがなも多い。ひらがなが柔らかくてみずみずしい、不器用な感じをすごく引き立ててる感じがする。
それでいて表現がストレートでひりひりしている。ラノベっぽいっちゃラノベっぽいかもしれないけど、個人的に有川浩とか森見登美彦に感じるような偏屈な言い回しに頼るラノベっぽさはない。すごく好き。
きっと自分の高校時代にこういう人がいたらいいな、ということを想像して書いたんだろうな、と思った。でも大体の恋愛小説は作者の地元を舞台にしているし、そういうもんだろうな。

短編だからか、登場人物が綺麗に役割を果たしていたし、表向きのアクションが持つ暗示が散りばめられていて、ほとんどの設定には意味があって、すごくきれいなストーリーだった。最後の5行しか記されないオチがすごく鮮やか。オチってそういうものかもしれないけど。映画にしやすいだろうな、とも思った。

p.43
昼休みがおわり、僕は午後の授業に出席した。席についてしばらく先生の話を聞いていたが、やがて息苦しくなり、前傾姿勢になって耐えた。おまえのきもちは錯覚だ。そう自分に言い聞かせた。おまえは演技にのめりこみすぎているだけなんだよ。だからもう感じるな。いっしょにいてたのしい、うれしい、といった気持ちを遮断するんだ。この騒動がおわったら、またおまえは一人になるんだからな。

p.53
キャッチボールはのどかな公園の雰囲気によくあっていた。つづけているうちに連帯感がうまれた。ずっと昔からこの四人でボールのやりとりをしていたようなこころよいきもちだった。そのうちに百瀬がいきおい余って強くボールを投げた。宮崎先輩がとりそこねて、ボールは車道の方にころがった。ボールの上を車のタイヤが通過し、ぷしゅっと空気の抜ける音がした。


p.55
「キャッチボールしてるとき、たのしかったな。全員がただの友だちだったらいいのに

p.70
僕は手をふって自転車にのり二十メートルほどすすんだ。彼女は僕の方を見てずっとたっていた。自転車をとめたら、彼女がちかづいてきて言った。やっぱりもうすこしいっしょにあるこうよ。着替えてくるから、一度、家にもどるけど。月曜日だったが、僕たちは学校を休んで一日中、土手をあるいた。



久しぶりにドハマりな作家に出会えた感じがします。個人差がありそうだけど。この本の他の短編も読んでるけどいい感じ。この人の本ちゃんと読もう。


百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)




映画「百瀬、こっちを向いて。」

昨日の今日で、きょう(日付変わったけど)映画版を観てきた。

なんかもう、すごくよかった。なかなか、筆舌に尽くしがたい。

単純に青春映画が好き、というのは大いにあるからちょっと盛ってるし、映画化にあたっていろんな演出が増えていて結構変わっている部分も多い。でも映像の引きこみは半端じゃないし、原作から変更された映画的な演出も、原作を最大限尊重した良い方への変更だったように感じた。すてきな映画化だった。早見あかりの存在感半端ない。
映像もうつくしい。屋上のシーンとか。河川敷のシーンとか。歩道橋の上のシーンとか。映像の偉大さを実感。現実に帰ってこられなくなる。原作読んでから映画観るのは否定されがちだけど、こういうのは原作読んで描いた画とあわせるから楽しめるものだったりする。

原作が結構シニカルな感じで、基本テンション低めのトーンで続いていくので、そのまま映画にはできないだろうなとは思った。やはり原作よりは結構直情的なシーンとか、情緒に訴えかける設定が増えたりしてた。でもそれはそれで映画としてすごく面白かった。私は3回泣きました。
そしてオチ。このオチは観てる気持ち的にはすっきりしないけど、映画としてはこういうものになるんだろうなー。秒速5センチメートルを思い出したのはおれだけじゃないはず。

「好きな人と思いが重なる瞬間が1秒でもあれば、それは幸せな恋なんだよ」
「…でもそんなの、一瞬振り向いてくれたって、その一瞬以外全部、他の人のものってことだよ」
「わかってるよ…だって好きになっちゃったんだから」



『百瀬、こっちを向いて。』予告篇 - YouTube


とりあえず無責任におすすめしておきます。
なんか文字に起こすとベッタベタな恋愛ものだな。でもこれはベタな恋愛ものとはひと味もふた味も違う感じはしている。
上演期間中に必ずもう1回見に行く。



ぼくが主題歌を選ぶなら


♪changes / Base Ball Bear

あんまりちゃんと考えてないからもっといい曲あるかも