どさんこ田舎者、東京でいろいろつくる

北海道遠軽町出身、さのかずや26歳。大学院を経て、再び東京で会社員。無茶と繊細さと賢さとバランス感覚。

【読書】「さくらの唄」 が童貞心とクリエイティブ志向にぶっ刺さりまくった件

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さくらの唄」というマンガを読みました。

さくらの唄(上) (講談社漫画文庫)さくらの唄(下) (講談社漫画文庫)


昨年末に読んだこのマンガ。表題の通り、ぶっ刺さりまくってしまった。
1990-1991年のマンガ。25年前。生まれた歳。これだけ青春のひりひりした一瞬を削ぎ落したものでありながら、四半世紀後の人間の心を震わす創造物、凄みを感じる。



あらあらなあらすじ


舞台は東京、高校3年生。姉と二人で暮らしている市ノ瀬は、同級生の仲村真理に恋をしている。たまたま通っている画塾が同じこともあり、思い悩む日々の中真理へのアプローチを探る。真理が日々の生活の支えになる中、文化祭の時期に。クラスのみんなの、何かしたいけど案はない空気、エネルギーだけが有り余っている空気の中、市ノ瀬は勢いで「仲村真理が主演の映画を撮って、文化祭で上映する」と宣言する。
しかし、ある思惑を持って家に転がり込んできた叔父が、市ノ瀬の運命を大きな力で握り、動かし始める。一気に狂う歯車と日常生活の中で市ノ瀬は自分を見失うが、なんとか文化祭の映画は完成させる。しかしそこにも叔父の邪魔が入り、文化祭を舞台に想像を絶する出来事が…




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一気に読み終えた。立ち直れない。「最初から自分信じてやってりゃよかったのよ」




というようなあらすじを読んで頂けると、何となく分かるとおもいますが、前半はノスタルジーを引っ掻き回す青春劇だけど、途中からめちゃくちゃになります。でも最後はすごくきれいな幕引き。




童貞心とクリエイティブ志向。

ぼくが考えるこの本のキーワードは、「童貞心」と「クリエイティブ志向」。すごく直感的にだけど、この2つって切っても切れない関係にある気がしている。目に見えないものを追い求めるというか。「童貞心」であるがゆえの、自己防衛に関する感受性の高さだったり、表現手段の乏しさを激情でカヴァーする感じだったり。でもほんとはもっと、なんとかしてあの娘にこの気持ちを伝えたいって思いだったり。

もうこのへんが、自分の中高時代とかぶりすぎてかぶりすぎて、感情移入できすぎて、つらくなりながら上下巻700ページ一気に読んだ。




引用とぶっ刺さりポイント

で、印象に残った部分抜き出してみたんですけど、もうひとつひとつ言葉が強いので、どの部分とっても「童貞心」と「クリエイティブ志向」が伝わる。気がしている。印象に残った部分の引用と、各所のぶっ刺さりポイントをまとめる。特に記載がないのは言葉で察して


上 p.33
オナニーより大切なものが生活にほしかったんだ

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上 p.73
城がこわれるのをオレは笑いながら見ていた
オレが甘かったと思いながら見ていた

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上 p.133
面白えなそれ、いーよ

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これ、過去に一度自分のこといびったやつに本音を打ち明けたら、思いの外共感してくれた、っていうシーンなんですけど、もう刺さった。自分の何に刺さってるのか分からないけど、多分おなじようなことが何度もあったんだろうと思う。きっと理不尽なこと言うやつにぶつかってきた事がある人には、誰にでもある経験だよなあ。


上 p.173
グリコ ポッキー アーモンド くらっしゅなのだ〜

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これは、真理が市ノ瀬におどけるっていう場面なんですけど、もうなんていうんですかね、自分の好きな人が、自分の目の前で、自分だけにおどけた姿を見せる、って、もう童貞にとってはヤバさしかないやつじゃないですか。だんだん熱くなってボキャブラリー貧困になってきましたが、熱意で感じ取ってください(童貞心とクリエイティブ志向)


上 p.332
「ぼくの昼休みの居場所はいっつもここさ…」
「文化祭の話しあいに参加してよ」
「ぼくなんか入ると座がしらけるよ」
「別に宴会じゃないんだし」
(略)
「なまじ感受性が強かったり 飛び抜けた才能があったりすると 集団からはじかれていくだろ 日本って国は」

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ここは、映画づくりに向けて動き出した市ノ瀬と、クラスの隅で大人しくしていて気味悪がられているノヒラのやりとり市ノ瀬は勢いと自分の主張で始めたとはいえ、みんなに参加してもらいたい。いびられる気持ちも分かるから、ノヒラのように輪に入って行けない気持ちもわかる。それでこのやりとりですよ。このシーン自体がもうめちゃくちゃ熱いんです。ぼくが高校3年生のとき、文化祭の出し物を仕切って、ウケると思って台本作って劇やったらダダすべってめっちゃ凹んだつらい経験を思い出しながら読んでた。その時も地味な理系クラスで、正直ぼくは誰とでもうまくやれるタイプじゃないし、矢面に立てるタイプじゃないけど、みんなに声掛けてめっちゃがんばった。そんな記憶。ノヒラの言葉が「23歳のさのかずや」の奥にいる「17歳のさのかずや」に刺さる刺さる。


下 p.35
「そうだ この辺で、こないだのオランダ旅行の家族フィルムをお目にかけましょう」
おやじが「帰れ」と言った

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これは貧乏人が嫌いな真理ちゃんのお父さん(画商)が、市ノ瀬とノヒラにきつく当たる、というシーン。下巻はこういう青春時代に得てしてぶち当たる「理不尽な力」の存在がどんどん大きくなっていく。「生まれの差」っていうのは本当に理不尽で、ぼくも会社に入ってから慶応義塾大学の人とか得てしてお生まれが良い人にたくさん会うけれど、マジで世界の差を感じる。叩き上げで育ってきて、ぼくがめちゃくちゃ努力して掴んだものを、彼はなんとなく暮らしてたら手に入れてて、ぼくが手に入れたいものが彼のすぐそばにあるのに、手をのばそうとしてない、とか。その人もその人なりに努力してるのかもしれないけど。そういうのに度々遭遇して、どうしようもないんだけど、なんかつらい気持ちになったりする。そういうものが押し寄せてくる。


下 p.94
おまえ 二十代で人生終わるとか思ってんじゃなかろーな
四十 五十と人生続くんで 否応なくな!
いやでもいつかはどっかにおさまらなしょーがないんや
世の中そうなっとんのや

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ここから先は変に説明すると核心に触れちゃうので何も述べません!


下 p.141
切ねーなあ姉ちゃん… オレ
オレ…だめなんだよ こーいうの
もう一生こことはお別れなんだって…
オレが死のうが 宇宙の滅亡がこようが
ここで暮らした日々は もうおわりなんだって思うと…

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下 p.177
「周りが立ち止まらず忙しくしてても あたしだけは見てる
 それじゃダメ?」
「仲村さん… 変わんないでね」
「え?」
「変わんないでよ」

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ぁーもうエモい


下 p.283
ある程度まともに育った奴なら うすうす気づくはずだ
オレ達のほとんど8割にロクな将来はねえと
愛する友達 甲子園目指した野球部のマサヤ
彼女を守って隣の高校のヤツをブン殴ったヒロシ
麻雀ばっかやってたアマツにサイトウ
青春の疾走りをやめなかった美術部の先輩ら
そして魂をわけあった 世界で誰よりも美しい女達

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ぁーおれこういう歌知ってる、あの人の歌だよ


下 p.284
悩める思いーーーーーー
しかし当時の彼に一番必要だったのは
自立心と 我斯く在るべしとするパワーだった
しかし そうなるのは もう少し先の話だ

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これだよ、クリエイティブ志向がありながら、一歩を進めない、前に進み続けられない全ての童貞たちに捧げられた言葉だ。その辺の自己啓発本より人生動かされる。


下 p.298
ずっと自分のこの性格から逃げていたんだ
一度のめりこむと体力の限界まで 自分を追い込んじゃう性癖
みんなラクにやってるじゃないか
こんな思いして毎日生きてる奴が友達にいるか?

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これ、劇的なアップダウンの後の焼け野原のような心で、受験前に絵に打ち込む市ノ瀬の心情なのです。この後市ノ瀬この課題でB゜の評価をもらう。そして一言「うれしいや」とだけ心のなかでつぶやく。自分に妥協せず、ただ限界まで己と向き合って打ち込む。体育会系とクリエイティブの世界がここでつながるかと思った。まさにぼくがずっとやってきた陸上競技と同じ心情なんだ。17歳のぼくが走りながら思っていたことと全く同じなんだ。そして少しだけ結果が出て、「うれしいや」と心のなかでつぶやく。これなんだ。童貞心とクリエイティブ志向。


下 ラスト
市ノ瀬とノヒラは自分の道を貫いて花開く)
(高校時代の友達はくたびれたサラリーマンをしている)
「最初から自分信じてやってりゃよかったのよ」

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これに関しては何も言いますまい。






童貞心とクリエイティブ志向を捨てきれていないあなたへ


さくらの唄(上) (講談社漫画文庫)

さくらの唄(上) (講談社漫画文庫)

さくらの唄(下) (講談社漫画文庫)

さくらの唄(下) (講談社漫画文庫)


ぜひ最後まで読んで語り合いましょう。




さくらの唄

さくらの唄


あえて名前を出さなかったけど、ぼくの人生を悪い方向にねじ変えてしまった、GOING STEADY。ゴイステの「さくらの唄」がたしか2000年。ゴイステ好きなら、銀杏好きなら、峯田がこのマンガにどれだけ影響を受けているのかがすごくわかる。



勢いだけブログ


久しぶりに勢いだけでブログを書いた。たまにはこういうのも必要かもしれない。気づくと分量だけ多くなってしまうのが難点。もう1時間半書いてるし。ちゃっちゃと記事書けるようになりたい。







GOING STEADY / 青春時代

この曲しかないよーーーーー
「大人が死ぬまであと25年 僕らが死ぬまであと50年」