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どさんこ田舎者、岐阜でものづくり修行中

北海道遠軽町出身、さのかずや24歳。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)にいます。

無職の父と、田舎の未来について。(9/24追記)

text inaka

思ってたより、深刻だった。



いま僕は、来週から始まる教育実習のために実家に帰省している。
僕の実家は、北海道の片隅にある。どれくらい片隅かというと、これくらい。


大きな地図で見る

実家には事務職をしている母と、高校3年の妹、
そして今年の春から無職の父がいる。

今回、父の就職活動を少しだけ覗き見る機会があった。
そこで僕が父を見て感じたこと、父を取り巻く環境を見て感じたことが、
いままで自分が思っていた「田舎」のイメージと大きく異なっていた。

東京都心から5時間と5万円、あるいは1万円と12時間離れたこの町。
都会に出ていく田舎者として、田舎のために何かできるだろうかと思い、
とにかくこの状況を多くの人に知ってもらいたい、と思った。
そのために、少しでも多くの人に知ってもらうために、
いまこうして文章にしようと思った。

拙い文章ですが、田舎の現実を知ってもらうため、
できるだけ多くの人に読んでもらいたいと思っています。
少々前置きが長くなりますが、最後まで読んで頂ければ幸いです。



◇父について。

父はうつ病だった。

父はずっとこの町で、社員10人にも満たない会社で働いていた。
元々自分の思っていることを人に言わない性格で、
無断で会社を休んだりすることもあった。

僕が高校の時ぐらいから軽いうつ病を抱え、
治療しながら働いていたが、
2年前のちょうど今頃、港で頭をぶつけて海に落ちた。


すべて母から聞いた話であるが、
2年前の秋の夕方、母のもとに父から突然電話がかかってきたらしい。

「海に落ちた。頭をぶつけた。港にいる。」

母が急いで、車で40分ほどかかる港に向かうと、
車の運転席でびしょ濡れで座っている父がいたらしい。
言葉がたどたどしかったため、母は救急車を呼び、父は病院に搬送された。

どうやら父は釣りをしようとしていたところだったらしいが、
誤って港から落ちたのか、故意に落ちたのかはわからない。
ただ母によると、父は泳げないらしいので、
頭打ったのに上がってきただけ本当に良かった、と何度も言っていた。

父は後頭部をぶつけていたようで、脳に軽い損傷があったらしい。
父は実家から車で1時間の地方都市にある、脳神経外科の病院に入院することになった。
大学2年だった僕はギリギリ夏休み期間だったため、
数日後に大阪から帰ってきて父のお見舞いに行った。

父は集中治療室のベッドで寝ていた。
ほとんど意識がなく、目が覚めてもあまり反応しなかったのを覚えている。


その後、父の状態は徐々に回復していった。
会社のほうは復帰まで待ってくれるとのことで、僕達家族は本当に安心した。
数ヶ月して退院し、リハビリに通いながら、仕事にもゆっくり復帰した。

しかし元々あまり喋らなかった父が、更に思い通りに話せないようで、
幾度か突然「仕事やめる」と言うことがあったりしたらしい。
僕はその時父に電話して、
「おれはなんとかなるから、お父さんのやりたいようにしなよ」
と伝えた。

その時父は、
「まあ大丈夫だ、カズが卒業するまではやるよ」
と言っていたが、
結局父は仕事をやめた。今年の春の話だ。


それから半年。
約1年間の失業保険の期間が半分ほど過ぎた。
現在は母の稼ぎと月15万の失業保険で生活している。
父は家事をしたり、テレビ見たり、ほぼ唯一の趣味である釣りに行ったり。
就職活動はあまりしていない。

僕は母方の祖父母ととても仲が良いが、
母方の祖父母は父がなかなか働かないことに焦れているようだった。
それが僕にとっては結構辛い。



◇田舎の仕事について。

そうは言っても、もう歳も50近いのに、
帰省するたびいつまでも家でケータイいじってる(グリーやってるらしい)
父を見るのはなかなかつらいものがある。

僕はやっぱり気になって、父が釣りに行っている間に、
居間に置いてあった数十枚の求人票を見た。
これだけ何十枚もあるなら、きっといくつも仕事はあるんじゃないか。
父もなんだかんだ仕事選んでるんじゃないか。
そう思ったのは少し甘かった。

腰が悪く身体もあまり丈夫でない父に、土木の仕事やトラックの運転手は無理とすると、
介護職か農業従事者しかない。何十枚もあるのに、だ。
給料はどっちも月給13万くらい。フルタイムで。
13万なんて、都会なら大学行きながらでも稼げるくらいの額じゃないか、と僕は思った。
失業保険は月15万だ。

介護職は週1くらいで夜勤があるし、コミュニケーションが必須だ。
農業は朝5時から、長い昼休みをとって、仕事は夜まで。
土木ほどではないにしろ肉体労働であるし、
父はもともと口下手な上、頭をぶつけた後遺症があるのか、
稀に会話が成立しないこともあり、コミュニケーションが万全とはいえない。


正直、僕自身ならば、何かしらの仕事をして生きていけるだろうとは思っているし、
父もなにか仕事ぐらいあるだろうと思っていたが、
父はどこにでもいけるわけじゃないし、丈夫な体があるわけでもないし、
何か立派な資格を取れるほど物覚えが良いわけでもない。
田舎で働くということは、思っていたよりずっと大変なことを知った。

お盆に帰省して中学の同級生と飲んだとき、
中学の同級生でさえ、地元で働いていないやつが何人もいることを知った。
そいつらに働く意志があるのかは分からないが、
働く意志があってそれなら、50近くて身体も丈夫でない父に仕事はあるだろうか、
などと考えてしまった。

田舎だから、なんだろうか。
都会に行っても、状況は変わらないんだろうか。
僕の浅い知識と偏見からでしかないが、
都会のほうが仕事はもっといろいろなものがあるのではないかと思ってしまう。


前置きがすごく長くなってしまったが、
僕がいま考えていること、多くの人に聞きたいことは以下の3つだ。

  1. 向上心があまりなく、身体が丈夫でなく、コミュニケーションが取りにくい人間に、できる仕事はあるか。
  2. そういった仕事を、人口100万以上の都市まで車で4時間かかるような、田舎に作ることはできるか。
  3. そういった仕事に限らず、都会から田舎に仕事を流すことはできるか。


そう簡単に答えが出ることじゃないと思うけど、なにかできることはないだろうか。
と思って、ここ数日ずっと考えてます。


さっき母と2人で話したとき、母はこのようなことを言っていた。

母は父がコミュニケーションを取るのが苦手だと思っているから、
介護職より農業のほうがいいのではないかと言っている。
しかし父は介護の仕事がしたいようだ。
どちらにしろ、働くと収入が減ってしまうので、
遅くとも失業保険が切れる半年後からは、何らかの仕事をはじめる予定らしい。

これを聞いて僕は、父が働いていないことに関して、
全く無計画に働いていない訳ではないと知って少し安心したが、
働き始めると収入が減るって、生活保護もしかり、
ありがたいことではあるけど、絶対何か狂ってると思った。本当に。

もしかしたら、仕事がなくて困ってるのは父やうちの家族だけかもしれないけど、
少なくとも割と田舎の普通の家庭であるうちの家族が困っているということは、
他の家庭や他の人々にも起こりうるんじゃないかと思ってしまう。
実際はどうなんだろう。


先日、旭川で来年から看護師になる友人に、
「『介護施設』と化した病院と、崩壊寸前の地域医療」の話を聞いたが、
その話はまた。

どちらにしろ、北海道の片隅のような、
「都会が近くにない」田舎は、生活が崩れる寸前のところまできているらしい。
僕が今まで「当たり前の幸せ」だと思っていたものは、
絶妙なバランスの上にあったものらしい。


このあたりに関して詳しい人や、何か考えがある人は、
どんな形であれ、ぜひコメントやメッセージを頂ければ大変嬉しいです。

そうでない人は、じわじわと不安に削られる田舎の生活があることを、
少しでも記憶に留めておいてもらえたらと思います。
例えば大学生で、起業を考えている人などは、
「それは田舎でもできはしないか」
ということをちょっとでも考えたりしてくれたら、すごく嬉しいです。

もちろん、すべての田舎がそうではないだろうし、
ここだって田舎なりの幸せはたくさんあります。
思い込みやすい僕の、ただの杞憂かもしれません。
僕だって田舎で働くわけじゃないので、田舎の分からない事情もたくさんあります。

でも僕は日本の端っこから真ん中に出ていく者として、
田舎に幸せであり続けて欲しいという思いがあります。


僕にはまだ只の大学生で、何の力もないし、
偉そうなこと言ってるばっかりで何も知らないし、
これからだってそんな力を持てるかはわかりません。
意識高そうなことばっかり言ってる薄っぺらい人間です。

それでも、僕にご意見、ご指導いただける方がいらっしゃれば幸いです。
この文章を読んでくださっている皆さんにも、
いつか直接協力を求めることがあるかもしれませんが、
その時は何かほんの少しでも、お力添えいただければと思っています。


これが僕や田舎にとっての、何かの一歩になればと思います。
ブログや長文を書くのに慣れておらず、本当に拙い文章ですが、
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想等お待ちしております。





09/24 00:35
☆追記

この日記を投稿してから1日、反響の大きさにかなり驚いています。
300あまりだったページビューは1日で49937まで跳ね上がりました。
それだけ多くの人の目に触れた文章は、それだけの価値があったのでしょうか。

今日1日、この記事についたコメントやはてブのコメント、
Twitterでの反響をかなりの数見ていました。
その中で、説明不足により誤解を招いてしまっている部分が多々あったので、
それについて触れておきたいと思います。


◇僕がこの記事で書きたかったこと

僕がこの記事で書きたかった、伝えたかったことは、
「田舎の仕事とその状況・展望について、何か知っていれば教えていただけないでしょうか」
「そうでない人は、これを機に田舎について何か考えて頂ければ幸いです」
に集約されます。

僕の質問項目が少しおかしかったのもありましたが(後述します)、
僕はその質問項目が客観的に考えたり、資本主義的に考えれば、
その答えはすべてNOであることはわかっています。

田舎を諦めて都会に行けば仕事はあるだろうし、
父が働かなくたって、養おうと思えば来年からの僕の給料で両親くらいなら養えると思います。
コメントにもありましたが、客観的に見れば、父が死ねばそんな問題など存在しないのでしょう。

でも僕が思ったこと、言いたかったことは、そういうことじゃないんです。
自分の故郷に住むということ、自分で働いたお金で生きるということ、
そういうことを「答えが見つからないから」「みんなそうだから」
という理由であきらめていいのか、と思ったんです。

「田舎は発展途上国と同じかそれ以下だ。甘えるな」
「田舎に住む事自体が贅沢ってことを自覚しろ。田舎で死ね」
「月額13万やそれ以下で働いてる人なんていっぱいいる」
みんなそんな中頑張ってるんだから、何も知らない若造がボケたことぬかすな、
と言っているようにしか聞こえません。それはわかってるんです。

その中で、何かできることはないのか。
たとえ生産性がなくても、普通雇えるような人間じゃなかったとしても、
田舎を愛し、田舎に住みながらできることはもうないのか。
もし良ければ、一緒に考えてくれませんか。
ということを言いたかったのです。


◇父は障害者というほど状態が悪いわけではありません。

普通に車の運転もできるし、普通に釣りもできるし、ご飯も食えるし、携帯もいじれます。
生活自体は何の不自由もなくできます。
言葉についても僕達家族が「頭を打ったせい」と思い込んでるだけで、
もともと無口だったので、特にそんなに変わりないのかもしれません。
そういうところを強調して書きすぎたのはすこし反省しています。

だから、障害者認定されるようなレベルのものではないと思います。
あと、母親はおそらく田舎の一般的な水準の給与を頂いているので、
生活保護をもらうことはないと思います。切り詰めればそれだけでも生活できるのかもしれません。
妹の学費などを考えなければ。

先程も述べたように、
「いまお前らの家族が生きていけるなら、仕送りすれば大丈夫なら、いいんじゃん」
ということではなくて、住むこと、働くことに関しての問題への、
解決策は本当にないのか、ということを考えたいのです。


◇質問項目に少々齟齬がありました。

  1. 向上心があまりなく、身体が丈夫でなく、コミュニケーションが取りにくい人間に、できる仕事はあるか。
  2. そういった仕事を、人口100万以上の都市まで車で4時間かかるような、田舎に作ることはできるか。
  3. そういった仕事に限らず、都会から田舎に仕事を流すことはできるか。

この項目に対して、僕自身の考えを述べていなかったので、それも付け加えて少し訂正しようと思います。
1に関しては、正直「働けない人間に仕事はあるか」ということを書こうかと思ったのですが、
1のような人を「働けない人間」と決めつけてしまうのは早計ではないのか、と思い、こう記述しました。

「そんな人間都会でも働くところはない」
「向上心のない人間は今では東南アジアの労働者に置き換わっています」
それは僕も重々承知しています。それでもほんとうにそうなのか、
どこかにないのだろうか、と思ったのです。
向上心をなくした人間は死ぬ以外にない、っていうことをもう少し疑ってみたいんです。

2に関しては、1がある前提での話なので、これを独立させて書いてしまったのが誤りでした。
「1があるとすれば」ということを文頭に付け足しておきます。
「長時間の通勤も視野に入れれば広がるのでは」
さすがに札幌までは不可能だと思いますが、ある程度就職先が広がる可能性はあるかもしれません。
でも田舎で働くことの解決にはならないのかな、と思ってしまいます。

3に関しては、「流す」という表現に関して語弊がありましたが、
田舎でもできる、今都会にある仕事はあるか、ということを伝えたかったものです。
僕自身は、ちょっと3番からは逸れますが、コメントなどにもあったように、
例えばユースホステルが現実的なものになるのかな、と思っています。

母は、夢の話でしかありませんが、
この街にはカフェがないから、そういうのをしてみたい、という話をしていました。
ちょっとこれは街の環境について詳しい事情を知らなければわからないかもしれませんが、
僕個人的には結構着眼点はいいのではないか、と思いました。

ただ、確実に初期投資がかかってしまうし、今は全く元手がないので、
僕が元手を提供できるくらいになればそれも考えられるのかな、と思っています。
カフェ、ユースホステルといったもの以外の方法についても、
いま考えようとしているところです。


あまりにも
「お前の考えていることはもうどうしようもないことだ、あきらめろ」
というニュアンスのコメントが多かったので、追記させていただきました。

本当に難しい問題だと思いますが、一緒に考えてくれる人がいればいいな、
そこまでじゃなくても、なにか心に留めてもらえるものがあればいいな、
と思っています。

直接のメッセージについては、TwitterFacebook
sanokazuya0306あっとgmail.com
に頂ければ大変嬉しく思います。
明日以降(もう今日か…)ちょっとたてこんでしまうので、返信できないかもしれませんが。


なんにせよ、たくさんのコメントやブックマーク、いいね、
また少しでも気に留めて下さった方がたくさんいることにすごく驚いています。
もっといろんな人の考えを聞いてみたいと思っています。
今までコメントを寄せて下さった方本当にありがとうございました。
いま初めて読んで下さった方も、ぜひ何かご感想やご意見を頂ければと思います。

09/24 01:19




続き。
「反響まとめ。田舎からできることと、その可能性について。」
http://d.hatena.ne.jp/sanokazuya0306/20121018/1350576930
「最後尾から最先端へ。島根の離島、海士町で見たもの。」
http://d.hatena.ne.jp/sanokazuya0306/20121230/1356852339