さのかずやブログ

北海道遠軽町からやって参りました、さのかずやと申します

株式会社トーチを設立します(裏) 14歳のさのかずや、あるいは田舎でやり場のない怒りと向き合う君へ

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2005年、北海道紋別郡遠軽町西町2丁目に住む少年は、サクラ楽器で買ったレスポールエレキギターを深夜に弾きながら、「なんでおれの街にはライブハウスがないんだろう」「なんでおれの街には銀杏BOYZELLEGARDENKen Yokoyamaも来てくれないんだろう」と考えていた。





学校にも家にも居場所がないように感じていた。自分が面白いと思っていることは誰も分かってくれないと思っていたし、自分は少し変だからいじめられてもしょうがないと思っていたし、誰かの意図に沿わない反論はすべて「屁理屈」だと一蹴されていたし、理不尽なことを飲み込んで生きていくしかないと思っていた。

家にあるWindows98で親の目を忍んでインターネットをやっていた少年は、ホームページが「HTML」というしくみで作られていることを知った。<marquee>というタグを使えば文字が動くことを知った。これなら、何も面白くないこの町の外の、自分が面白いと思うことを分かってくれる人に会えるかもしれない、と思った。少年はインターネット上に居場所を確保し、文章を書き始めた。その場所はいまはもうない。

のし上がってやる、と思った。地元を飛び出して、様々な世界に飛び込み、国内45都道府県、海外20カ国を旅して、いろんな立場の人、いろんな考えの人と話した。探究心と好奇心のままに駆け回った先々で、若いのにしっかりしているね、と言われ続けてきた。当たり前だ、と思った。危機感も、切迫感も、切実さも、渇望も、思考の深さも、足を運んだ距離も、あなた方とは違うのだから。そう思っていた。

誰もいない道を昼夜ひとり走り続け、次々と立ちはだかる障害をなぎ倒し続けて、たくさんの引っ張り上げてくれた先輩たちと、何度も転がり込んだ運のお陰でたどり着いた世界は、拍子抜けするほどに、平和な世界だった。





新卒で運良く内定を頂いた会社は、当時の就活人気ランキングではかなり上位の、有名な広告代理店だった。120人いる同期は、なにかの日本代表、なにかに命をかけている人、キャラが異常な人、誰もが天才的な才能と明らかに強いクセを1つも2つも持っている人ばかりであったが、みんなめちゃくちゃいいヤツだった。自分みたいな性格の悪いやつはいなかった。

よくよく聞くと、みんな昔から、自分の好きなように生きてこれていたようだった。当たり前にいい学校に行き、当たり前に高い文化に触れ、当たり前に自己実現していた。そこには田舎に渦巻いていたような、妬み、嫉み、恨み、その類のものがあまり存在しないようだった。

青年になった少年は、自分の出てきた世界を思い、自分がいまいる世界との深い深い溝を思い、立ち尽くした。そこにある溝が見えていて、その深さに立ち尽くしているのが自分だけだということにも気づき、呆然とした。





おれはもうずっと怒っていた。

恵まれた環境の下駄で転がってくるチャンスをどんどん拾い、ろくに実績も残さずに、現実も知らずに、それらしいツイートで悦に入ってるやつ。知恵も矜持もなく、群がってくる若者にお金とチャンスをばらまきながら、「なんかやりましょう!」で内輪で盛り上がってるやつ。信じられないほど良い生まれで、信じられないほど羨ましいことを、なんの不自由もなくやれているやつ。

道内のとあるローカルで古い業界ながら新しいことやってる人が「札幌は友達いないやつが内輪で盛り上がっているだけ。道内のほかの地域のことは眼中にない。だから相手にしてもしょうがない」と言っていた。おれも全くそう思う。

昨日札幌で、同い年の友人と飲んだ。北海道出身で、大学で東京に出て、東京の大手企業で働き、数年前に札幌の有名な会社に転職した。「正直、東京のときの仕事に比べると、ぬるい。高いクオリティが求められていないし、正当に評価できる人もいない。地元の人が頑張っているイベントもあるけど、正直東京でやってたものから見ると、悲しいくらいのレベル」。おれも全くそう思う。

もうたくさんだ。もうたくさんなんですわ。





そう思って走ってきてまもなく30歳。ようやくいろいろな考えが変わりつつある。

かつては生まれの格差にただ怒り、生まれもまた才能である現実に打ちのめされ、恨み言ばかりこぼしていた時期もあった。でも、もうしょうがない。恨み言を言ってもその人の生まれが下がるわけでも、自分の生まれが上がるわけでもない。こちらから羨ましく見えていても、生まれが良いなら良いなりの辛さもあることを、同じ目線に立つことができて初めて知った。

バイブスの合う合わないは間違いなく大事で、自分のやっていくこととやっていく人の範囲はそこに置くべきだと考えている。だけど、別にバイブスの合わない人に対してどうこう言う必要はない。羨ましいならプライドを捨てたほうがいいし、自分の目指す形と違うなら気にするだけ無駄である。もっと大きな課題に対して、手を組めることは手を組んでいくべきだ。

職人でありたい気持ちはあるし、多くの職人が職人で居続けられるためにつくった会社であるが、自分はつくり手の一員として、つくる人と世の中の間に立ち続け、そこのつなぎ目を大きくしていくことが使命であると感じている。

そこの「職人と世の中をつなぐ」という職人性に関しては誰にも負けない矜持はあるが、同じ未来を目指し、近い領域で先を走る先輩たちを追いかけ、引き継ぐべきものを引き継ぎ、自分のスキルをまだまだ伸ばし、渡していきたいと思っている。

フェイク、しょうもないこと、社会の根本的な問題、おれが見たあの深い深い溝を更に深めることには一切加担したくない。そんなことよりも、救われたかったおれ、どこかにいるかもしれない救われたい君のためにやることをやりたい。深い深い溝の縁に立ち、その反対側に手を伸ばそうとする君に何かを託したい。

そのために、おれはローカルに戻って、ローカルのぬるま湯でよろしくやるのではなくて、深い深い溝の縁、片側の最前線と、もう一方のローカルを、軽やかに行き来できる存在でありたい。その中で、ローカルから最前線に連れて行くべき人を連れていき、最前線からもたらすべきものをローカルに持ち帰りたい。

割と支離滅裂なこと言っている気がするけど、もう考えを綺麗に整理する気持ちの余裕がない。なんかもう自分語りのお気持ち砲を撃ちすぎてずっと同じこと書いている気がしてきたので、もうこういうこと書くこともなくなるだろうと思う。なので、もうこのまま出す。そのうち編集するかもしれない。





いまはいつでも誰とでも連絡が取れて、仲間を見つけ出しやすい世の中。北海道の片隅で自分の行き場がないと悩んでいるアイツのようなやつはもういないと信じたい。でも、いまのおれだってそう思うことがあるんだから、たぶんそういうやつはまだ結構いると思う、子どもでも大人でも。

キラキラローカルにもオラオラローカルにもなれないおれたちの居場所を、おれたちがつくっていくために。キラキラでもオラオラでもないから、インターネットでイキらないので伝わらないかもしれないけど、本気です。でもお気持ち砲撃ちすぎてさすがにもういいだけ伝わってるかもしれない。

「クリエイティブ」な「クリエイター」じゃなくていい。何かをつくる意志があるか、つくることに向き合っているかが重要なはず。肩書きやフォロワー数、ついてくれている大人の強さで殴り合うしょうもないレースとは距離を置いて、一歩でも二歩でも、ローカルでつくって暮らせる世界を進めたい。

ローカルで頑張っている人、自信を持って生きている人は、都会の最前線で頑張る人と何も変わらず、どっちもめちゃくちゃかっこいい。ぼくの知っている人で言えば、北海道紋別市はまなす通りというスナック街を愛してやまないみちおさんは、クリエイティブの莫大な実績を引っさげて大きな挑戦に取り組むニイザワさんとおんなじくらい、真剣に自分が使命感を持つ物事に向き合っている。地元を牽引する使命を持つ土建屋さんの跡継ぎのゆうきさんは、世界数万人の従業員がいる大企業で新規事業企画を行うゆうしさんと全く同じように、まだ見ぬ領域で、限られたリソースで、プレッシャーの中で試行錯誤している。どんなことにも絶対手を抜かず、自分のクラフトバイブスの赴くままに超つくるしょうごくんは、大学中退したのになぜか代理店に新卒入社して、抜群の嗅覚と人脈とやり切り力で実績をつくり続けるスズケンと全く同じように、自分のクラフトにレバレッジをかけておもろい人とおもろいことをやり続けている。他にも、深い深い溝のこっち側にも向こう側にも、たくさん。

ローカルでも世界と戦えるように、いや、より正確に言えば、ローカルでやっていてもデカいロジックに巻き込まれないで済むように、ローカルを諦めないでいるために。おれは溝のもっと向こうまで行くし、その反対側の向こう側まで行く。それぞれにいる仲間と、軽やかに。





手を組んでいきましょう。連絡します。連絡ください。どなたでも。足を運んで会いに行きます。どんな分断も越えて。足を運んで会いに来てください。どんな分断も越えて。





"まだ見ぬ明日に何があるのか 何があるのか僕は知らない 待つべきなのか 向かうべきか 薄ら笑いで歩いてゆこうか"
"失いかけてた希望の光が それでも来いと僕を呼んでいる"

"They don't come walkin' in, Give and get, Everything
Why don't we change the world just like we want?
If we believe, It's not too late to start"

”俺ら軽快 正体は明快 平和な国の一個小隊"






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