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どさんこ田舎者、岐阜でものづくり修行中

北海道遠軽町出身、さのかずや25歳。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)にいます。無茶と繊細さと賢さとバランス感覚。

「ひとりの女子高生のために駅が存続する」という話は「美談」なんかじゃない

inaka

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ぼくの地元、北海道遠軽町(ここは旧・白滝村)の駅が廃止になることについて、「たったひとりの女子高生のために廃駅が延期されるなんて!」という美談で、遠く海外まで広く拡散されている。

irorio.jp

この話に、たぶんメディア関係者(働いていた広告会社はやめたけど、いま通っている大学院はメディア表現研究科)で一番感心を寄せている人のひとりとして、いろいろ考えることがあったので、書いておきたいと思う。




まず、これはいい話なんかじゃない。

JRのような強い(と思われている)機関が、「田舎に暮らす一人の女子高生」という弱い(と思われている)存在を守る、というのは、いわゆる「美談」だ。得てしてみんなそういう話が好きだ。そして「世界が日本に注目」というのもみんなが好きな記号だ。だからネットニュースも取り上げるし、みんなシェアする。

でも、同じような状況である上白滝駅や下白滝駅も、定期利用者がいるのに廃止されるのに、まったく取り上げられない。なぜか?「女子高生」ほど守ってあげたり優しくしたりしたいと思うような存在ではないからだし、「女子高生」ほどみんなが注目する記号でもないからだ。

もちろん情報を流通させる記号として「女子高生」みたいなものが使われることはある。ネットメディアはとりあえず見てもらわないと始まらないから、そういうものを利用しがちだ。ぼくも最初は、こういう形でも目立つのはいいことかもな、と思っていたけど、だんだんその「メディアの暴力性」が目立ってきて徐々に気持ち悪くなってきた。




そして、遠軽のような田舎では「駅がなくなる」という現実だけがある、ということだ。

現在、日本で一番駅と駅の間が広いのは、JR北海道の上川駅と上白滝駅の間だ。今回の上白滝駅の廃止で、その区間はもう少し広がる。その間にもかつて人が住んでいたけれど、いなくなってしまった。

いま、特に北海道の田舎では、インフラが少しずつなくなりつつある。遠軽町遠軽厚生病院からは昨年産婦人科がなくなり、遠軽からは車で1時間以上かけないと産婦人科にかかれなくなった。遠軽町自衛隊の駐屯地もある、人口2万人の街だ。若者が減っているとはいえ、妊婦さんも少なからずいる(ぼくの友達もそうだ)。

そこにはどうしようもない現実だけがある。地元の偉い人たちが存続のお願いに行ったらしいけど、JR北海道だって、頻繁に脱線したりトンネルで火事を起こしたり、存続の危機なレベルの赤字だ。こうしてバズったからといってJR北海道に金が入るわけじゃないし、白滝の人たちが救われるわけじゃない。



このバズについて地元の人が書いたブログも、同じように取り上げられてバズっている。

jam1226.blog40.fc2.com

勝手にネット上で騒がれて、でも現実は何も変わらない辛さがあるように思う。これだって、「対立」という記号がみんなに見てもらいやすいから、「こういう人が困っている」という構図がシェアされやすいから、ネットメディアが取り上げているだけだ。



こうやっていま遠軽にいない、直接的に何か不利益を被っているわけじゃないぼくが、安全圏からこういうことを書くことだって、別に遠軽の人を直接的に救えるわけじゃない。騒ぎの助長になるだけかもしれない。これを見た遠軽の人から「当事者じゃないくせに何偉そうなこと言ってんだ」って思われるかもしれない。

かつてぼくは「無職の父と、田舎の未来について」という記事を書いたことがある。
sanokazuya0306.hatenablog.com

このときたくさんの人にいろんな批判を受けたし、たぶん親や地元にいる知り合いにもいろいろと迷惑をかけたと思う。ぼくの周りの現実は良い方には変わらなかったけれど、これを読んで考えてくれた人や、普段から考えていてこれを読んで連絡をくれた、会ったこともない人がたくさんいた。

だから、具体的に今なにか出来るわけじゃないぼくがこれを書くことで迷惑をかけるだけだったり、何もいい方向に変わらなかったとしても、それでもぼくは遠軽に暮らす人たちが幸せであってほしいと思うし、これだけは伝えたいと思って書く。



いい話だと思ってもらうことはそれはそれでいいし、おもしろがるのは人の勝手だし、鉄道マニアが来ることも悪いことではないと思う。
だけど、「いい話だ」として消費するんじゃなくて、もし何か少しでも思うことがあるなら、どうして遠軽が駅を畳まなきゃいけない状況にあるのか、ちょっと考えてみてほしい。そして、遠軽町のためじゃなくてもいいので、何かできることがあるなら、ぜひやってほしいし、協力してほしい。


そんな厳しい現実のある遠軽町や白滝地区でも、頑張っている人がたくさんいます。もしご興味があればいつでも紹介します。なにか同じようなことを思っている人がいればいつでも誰でも連絡ください。話しましょう。そんなカタい感じじゃなくても、遠軽は自然豊かで星きれいだし、スキーできるし、寿司もジンギスカンもうまいし、冬は車でちょっと走れば流氷も見れるし、ワカサギ釣りもできるし、雪まつりにもいけるし、すごくいいとこです。ぼくのばあちゃんの家ならいつでも泊まれるので、いつでも遊びに来てください。


連絡先:sanokazuya0306@gmail.com




ていうか海外でなんでそんなに取り上げられるんだろう?普通そんなところに鉄道通ってないから?最後に使うのが女子高生になるような人口の減り方してるとこがないから?

これの考え方次第では、遠軽は逆に世界にウケるようなところになるのかもしれない。




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